ミシュアル王子が月瀬家を訪れた翌日、舞の元に車が差し向けられた。

それも、キャデラックのリムジン。
ボンネットの先端にはクアルン王国の緑の国旗がはためいている。

大使館の依頼を受けたという外務省の担当者がふたり、車から降り立ち、玄関まで舞を迎えに来た。


「お、かあさん……これって何?」

「何でも、大学病院を予約してくださったんですって」

「ホントに検査受けるのぉ?」


とても『お断り』なんて言える雰囲気ではない。
裁判所の強制執行か、警察に連行される気分である。

舞は逃げるに逃げられず、母親と一緒に嫌々リムジンに乗り込んだ。



場所は都内の某大学病院。
舞たちは特別室に通された。

すると、理事長だか病院長だかが次々現れ、馬鹿丁寧に挨拶をして行く。

テーブルにはテーポットの紅茶にケーキまで出され……。
噂にしか聞いたことのない“VIP待遇”に親子はおっかなびっくりだ。

この時は、少なくとも待合室で肩身の狭い思いをせずに済み、舞はホッとしていた。


だが診察は、舞にとって信じられないことのオンパレードだった。

まず口頭で生理の周期や男性経験の有無などを質問され……内診があると告げられる。

恐る恐る通された部屋では、診察のためと入院着みたいなのに着替えさせられた。

そして、どんな検査をするのかと思えば……。


とんでもない格好をさせられたのである。

いくら女性のドクターでも、屈辱的な恥ずかしさだ。


舞は脳みそが沸騰するほど怒っていた。
どうして断われないのか、あまりに理不尽であろう。


確かに、日本にオイルショックを引き起こすつもりなどない。
できれば、舞が大学を出る頃には日本の景気が上昇してくれるように願っている。
自分の就職を心配することは、我侭でも自分勝手でもないだろう。


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