無言で地下駐車場まで来た舞は、目の前に停められた車に絶句した。

てっきり、来た時と同じ大使館のリムジンだと思っていたのだ。
それが……なんと、エレベーターの降り口にドンと横付けされた車はジャガー。

車に詳しくない舞にも判るマークが付いている。
XKRと書いてあり、コンバーチブルのタイプであった。
しかも色はメタリックグリーン。正確にはボタニカルグリーンというカラーらしい。

家の一軒というのは無理でも、舞の父が乗っている軽四自動車なら十台は買える値段であろう。


車を運転してきた男性が降り、そこにミシュアル王子が座る。
もちろん左ハンドルだ。


「舞、乗りなさい」

「の、の、乗れと言われても……殿下が運転されるんですか?」

「……」


どうやら「アル」と呼ばなければ返事をする気がないようだ。

舞は渋々口を開く。


「アル……が運転するんですか?」

「そうだ」

「あの、母はどうなったんでしょうか?」

「どうもなってはいない」

「……いえ、何処に行ったか、ご存知ですか?」

「病院を出て自宅に向かった。現在地が必要ならすぐに調べさせよう」

「い、いえっ! そこまではしなくていいです! 何でもないならそれでいいです」


あの母のことだ。
このミシュアル王子が来て「先に帰って良い」と言われたら、「王子様にお任せしますわ!」とか言って嬉々として帰ったに決まっている。

舞は、自分がどんどん砂漠に流されているのを感じていた。


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