琥珀色の誘惑 ―日本編―
ハッとして見上げると、王子の目は燃えるようにぎらついている。


(お、怒らせた? ど、ど、ど、どーしよー)


「ふまん……なんて。ただ、その、わたしなんかって言うか。身に覚えはないけど、スポーツでも処女膜は破れるっていうし……。そうじゃなかったら……花嫁になれないんなら、話を進めるのはその後のほうがいいんじゃ」


普通の日本人なら、舞の言葉の端々から、お断りの意思を感じるだろう。
だが、ミシュアル王子は日本人でもなければ只者でもなかった。


王子はフッと表情を緩めると、突如、舞の髪に触れたのである。


「長い黒髪は私の最も好むスタイルだ」

「短いと……どうしようもなくなるので、伸ばしてるだけで」

「その黒い瞳も、エキゾチックで素晴らしい」

「に、日本人は皆そうなんじゃ」

「身長も、私にはちょうど良い高さだ」

「ちょうどって……何がちょうど」


舞の髪を数本指先に絡め、王子は遊ばせるようにしていた。

それを不意に解き……大きな手の平が頭の後ろに添えられた瞬間、琥珀色の瞳が目の前に迫った。


そして、あっという間に舞は唇を奪われたのである。


< 35 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop