琥珀色の誘惑 ―日本編―
(18)愛かもしれない
約半月前、ミシュアル王子が座っていたリビングの古びたソファに、彼は腰掛けている。

ターヒル・ビン・サルマーン。ミシュアル王子のSP、側近と呼ばれる男だ。


最初、彼は床に座ると言って聞かなかった。
王子と同じソファに腰を下ろすなど畏れ多い、という理由からである。



クアルンでは王の椅子、王太子の椅子、その他王族の座る椅子というのがそれぞれ決まっているという。
ちなみに、妃は公式の場で同席することはほとんどないそうだ。

機会が少ないからこそ、以前ミシュアル王子が言ったように、夫の隣に座るのが常識になっているのだろう。


ただ最近では、国際社会において晩餐会などで困るケースも増えてきたらしい。

国賓として、国家元首を夫妻で招きながら、ホスト国のトップレディが出て来ないのは失礼だろう、という話。

でも、夫人が四人もいたら……それはそれで顰蹙ものだと思うのは、舞が日本人だからだろうか。


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