王子様は囚われ王女に恋をする
捕虜の生活
アリシアがセナール国で暮らすようになってから
早いもので1ヶ月が経とうとしていた。

捕虜としての生活は
想像していたよりもずっと平和で穏やかだった。

王宮の外に出る以外は特に制限もなく
自由に過ごすことを許されていたからだ。

セナールの王宮の侍女たちも
アリシアたちに冷たくあたることもなく
まるで客人のような待遇を受けていた。

「なぜこんなに自由なのかしら?」

ある日の午後、アリシアとイライザは
王宮の庭園で過ごしていた。

天気のいい日は、庭園の噴水の近くにある
ベンチに座って本を読むのが日課だった。

王宮の書庫から借りてきた本を膝に置いて
アリシアはふとつぶやいた。

「ほとんど何も制限がないなんて。
時折、自分が捕虜であることを忘れそうになるわ」

「そうですね」

イライザもアリシアの言葉にうなずく。

「カイル王子は何を考えているのかしら?」

「それは私にもさっぱり分かりません」

イライザの言葉にアリシアは溜め息をつく。

「叔父様がご無事だといいのだけれど…」

そう言って暖かい日差しに包まれていたアリシアは
急に眠気を感じ始めた。

「イライザ…、少ししたら起こしてちょうだい…」

そう言って、ベンチにもたれるとアリシアは意識を手放した。
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