惑溺

10









コンクリートの廊下を歩く自分の足音が、もうすっかり通いなれたリョウのマンションの薄暗い通路に響く。
ドアを開けようとバッグから鍵を出した時

カツ、カツ、カツ、

ヒールを鳴らして、誰かが近づいてくる音が聞こえた。
その足音に顔を上げると、女の人がひとりこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
そのただならぬ雰囲気に、私は銀色の鍵を握ったまま手を止めた。

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