惑溺

3






ここかぁ……。







私はクリーム色の紙袋を両手で抱えながら、目の前の建物を見上げた。
電話で教えられた住所には、6階建てのマンション。


はぁ……。
メモしたマンションの名前と、目の前の建物に掲げられた名前が一緒なのを確認してから、大きくため息をついた。

なんだか詳しく知りもしない男の人の家に行くのは、少し憂鬱だ。
そんな考えを振り払うように首を左右に振る。

まぁ、ただ手帳を受け取って帰るだけなんだから。
変に警戒したら相手にも失礼だ。

小さな紙袋を持つ手にぎゅっと力を込めて、マンションの入口へと歩いていった。
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