さくら色 〜好きです、先輩〜

中学では軟式テニス部に所属していた。

上手くはなかったけど、一緒に喜んだり悔しくて泣いたり、時にはぶつかり合ったりして大切な仲間とたくさんの思い出が出来た。



もちろん好きな人もいた。

二学年上のサッカー部のキャプテン。


当時、携帯をまだ持っていなかった私は思いきって先輩の下駄箱に手紙を入れた。


“仲良くなりたいです”って…


それから私と先輩の秘密の文通が始まった。

放課後にお互いの下駄箱に小さく折った手紙を入れる。

部活のこと、その日の出来事、テレビの話…色んな話をした。

風邪を引いて休んだ次の日には、下駄箱にのど飴が入っていたこともあった。

しばらくそののど飴は食べずに勉強机に飾っていたっけ…


廊下ですれ違っても話したりはしない。

それで満足だった。


文通していることは二人だけの秘密。

それが嬉しかった。


文通を始めてから学校に行くのがいつもより楽しくて仕方がなかった。


そんな日々が続いて…


先輩は卒業した。



初恋だった…


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