さくら色 〜好きです、先輩〜

さくら色


高らかな笛の音が場内に響く。

応援もより一層力が入り、会場全体が揺れているようだった。


うちの学校は勢いを緩める事なく果敢に攻め続けた。

相手チームは夏樹さんのミスが目立ち次第に夏樹さんにパスを回す回数が減った。

そして試合は動く事なく残り5分。

こぼれ球を夏樹さんが持った瞬間、夏樹さんは仲間に邪魔だと言わんばかりに倒されボールを奪われた。

夏樹さんは立ち上がる事が出来ずその場に蹲った。


その様子を見た先輩がボールを奪い場外に出す。

仲間は誰一人として夏樹さんに手を差し伸べようとはしない。

先輩や恭介達が心配した様子で夏樹さんに駆け寄った。


「…何で、誰も助けないの…」


自分の仲間なのに…

これが夏樹さんが好き勝手してきたことに対しての仕打ちなのだろうか。


「夏樹!!!」




突然の大声に会場が一瞬にして静まり返った。

会場内の全員が声の主を一斉に探す。


あれは…


「夏樹さんのお父さん…?」




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