さくら色 〜好きです、先輩〜

「葵は俺の事、男として見たことないだろ?先輩のこと今でも好きなのはわかってる。だけど、少しでいいから俺の事男として見て。考えてほしい」


恭介の髪が月の光に照らされて、まるで王冠を被っているかのように見える。


「もう少し自分に自信が持てるようになったら、改めてもう一度言うから。だからその時まで今まで通り普通に接してほしい。駄目か?」


不安そうに眉を下げる恭介。


正直、図星だった。

私は恭介を一度も異性だと思って接したことはない。

親友でもあり、兄弟のような存在で。

里美とはまた違う、大切な人。


そんな恭介が、突然私の知らない男の顔をしたから戸惑っていたんだ。


「わかった。恭介のことあんな風に避けたりしてごめんね」

「わかればいいんだよ」


そう言って、恭介はいつもの優しい目で笑った。


逃げないでちゃんと向き合わなきゃ。



ありがとう、恭介。



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