琥珀色の誘惑 ―王国編―

(9)プリンスとスキャンダル

「えーっと、だから、もういいってば」


舞の隣に座るシャムスが、ずっと鼻を啜っている。

今ふたりがいるのは、ベンツのストレッチリムジン、後部座席だ。中列は対面になっていて、シャムスの正面にターヒルが、舞の前にはヤイーシュが座っている。ふたりとも白いトーブを身に纏っており、見慣れぬ舞には何だか新鮮だ。

ミシュアル王子の命令で舞の警護についてきたのであった。


「私が不用意にも叫び声を上げてしまったせいで、ライラ様のお耳にも入ってしまいました。きっと、王宮の国王陛下やヌール様、その他の皆様にも話されるに決まっております。ライラ様のいらっしゃる時に、何という粗相を」



確かに、朝はひと騒動だった。

夜明け前にライラがいないことを確認して、ミシュアル王子は自室に戻る予定だったのに、ついうっかり寝過ごしてしまう。

一方、舞も男性の……それも好きな人の腕枕で眠るなんて初めての経験だ。あまりの心地良さに、シャムスの悲鳴を聞くまで、甘い眠りの中を漂っていた。


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