弟矢 ―四神剣伝説―
新蔵は苛立ちを刀にぶつけ、見張りを怠ったことを心底反省した。

だが、それもこれも、あの腰抜けのせいだと思うと、少しも怒りが治まらない。


「あれが本物の爾志乙矢なんでしょうか?」

「顔を見たであろう。一矢殿と瓜二つであった。間違いないだろう」

「あんな男に会うために、我々はこんな危険を冒したなんて……」


一年前、新蔵は一矢に負けている。二十歳で最年少の師範となった天才肌の彼にとって、わずか十七歳の少年に敗れたことは、相当な屈辱であったろう。しかも相手は、女神のように崇める弓月の許婚。


「弓月様は優しすぎる。あんな役立たずを一緒に連れて行こうなんて。同情にも程があると思いませんか?」

「さぁて……同情だけかな?」

「織田さん? それはどういう」

「しっ!」


風が変わった。

二人の表情は一変し、身を翻したのだった。


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