妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
第二章
 日が傾き、呉羽もそはや丸も、今朝のことなどすっかり忘れてしまった頃、ひらひらと紙の蝶が部屋に入ってきた。
 同時に、そはや丸が口を尖らせて外を見やる。

「・・・・・・うるせぇな」

 そはや丸はうるさいと言うが、葬送のこの地はいつものように静まり返っている。
 物の怪ならではの感覚だ。

 呉羽は紙の蝶を掴んだ。
 その途端、烏丸の声が頭に響く。

『お姉さん! 右丸が大変だよぅ! 助けて!!』

「・・・・・・助けて、と言われてもなぁ・・・・・・」

 手の中の蝶に息を吹きかけ、只の紙に戻した上で、呉羽は困ったように呟いた。

「そんな心配、無用のようだぜ」

 そはや丸が、顎で外を指す。
 呉羽にはわからないが、左大臣家辺りから、人が来ているようだ。

 が、人骨転がるこの蓮台野に足を踏み入れる勇気はないようで、どうやら入り口でもたついているらしい。

「右丸・・・・・・じゃねぇな。牛飼い童如きのために、他の者が動いてくれるもんなのか?」

 簀の子に立って、遠くを見やりながら言うそはや丸の後ろから、呉羽は伸び上がって同じ方向を見てみた。

「・・・・・・う~ん、わからん。迎えに行ったほうがいいのかな。烏丸が助けを求めてるのは確かだし。あいつが必死になってたら、何か可哀相だしな」

 動きやすいように髪を縛る呉羽に、そはや丸は密かに、くくっと肩を震わせた。
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