[完]大人の恋の始め方
◎Level 5






「はー…」



登校中、既に何回目か分からないほどのため息を付いていた。



フランスでのファッションショーは、無事に終わった。


優梨花さんも、満足していた。


楽さんも、いやいやフランスに置いてきた。



……なのに、あたしの心には、雲が掛かっている。



あの日以来、あたしと優斗さんの間には、埋まりそうにない溝が出来てしまった。



必要以上に話そうとしないあたし達には、以前のようなほんわかとした仲の良い雰囲気は、見事に消えてしまった。



あの冷たい部屋を思い出すと、5月のこの蒸し暑い季節でも、全身に悪寒が生じるのだ。



「一体何回目のため息よ?!」



急に話し掛けられ、驚きつつも、振り返る。



そこには、友美がいた。



「友美ぃ~!」



どうやら、後ろにいた友美すら分からないほど、周りが見えなくなっていたらしい。



「どうしたのよぅ!?」



明らかに取り乱したあたしを、心底驚いたように見る友美。



もう、全て話してしまえ!
そう思ったが、ここは通学路。



あたし達の他にも登校者が居るわけで。



尚且つ、興味と好奇の目が注がれている。



そんな中でこんな話、出来るわけないっ!!



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