サルビア
私が生まれたすぐに、母は死んでしまった。
父と私を残し、35歳という若さで逝ってしまった。
母は体が弱く、当時妊娠した際も出産には命に危険があると医師に告げられていた。
結婚してからなかなかできなかった子供がついに授かり母は必ず出産すると言い親族の止めも振り払い出産を決意した。
難産の中、ついに生まれたのが私だった。
母は涙を流しながらも私を笑顔で抱きしめていた姿を見て、父も親族もひとまず安心したという。
しかし、その夜に母の様態は悪化しついに息さえ苦しくなった。
「紗江…頼む、いかないでくれ…」
父は涙を流しながら母の手を握っていた。
「お願い…あの子の名前…」
必死に口を開く母は、なんとか笑顔を見せて苦しさを堪えていた。
「みんなの…太陽でいられるように…暗闇を照らしてくれる…ひかり…
光…に、して…」
それが母の、最期の言葉。