サルビア
参観日
参観日当日、あまり進まない足取りで私は学校へと向かっていた。
父母参観といえどほとんどの家庭は母親が来るだろう。

そのなか私一人、父親がいれば光が同級生になにか言われるかもしれない。
だからこそ行くのをためらっていたが光はきっと私がくるだろうと楽しみにしているかもしれない。

「(やっぱりそうだよな…)」

予想していたとおりに教室には母親しかいなかった。
生徒の中にはちらちらとこちらを見てくる子供もいてなかなか前を見ることもできずに突っ立ていた。
授業開始のチャイムがはじまり前の机には担任が立ち黒板にチョークで文字をかきはじめた。

「(どういうことだよ…)」

内容は生徒の作文発表のようだった。
そこまではよかった。


【私の家族】


家族は私しかいない光にとって、そんな作文の題材はひどすぎるのではないか?
ふつふつ湧き上がる怒りを抑えながらも静かに授業の様子を見ていた。

「じゃあ、何人かに発表してもらおうかな」

教師の言葉に数名挙手をする生徒がいた。
このやりかたなら光も無理して読むことはないだろうから安心だ。
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