《完》BLOODMOON~あやかしの花嫁~
躰が己の血では満足できないと訴えている。



この慢性的な渇望を満足させるには、やはり、俺の血では他人の血を求めている。



本来なら、月が満ちた時がいちばん、『討魔師』としての力が最大限に発揮されるのに、満月の夜の俺の力は吸血鬼の吸血衝動に阻まれて、格段に力が落ちてしまう。



「・・・タブレットもお持ちしましょうか?」
タブレットは俺の血液を凝縮した錠剤。



「いらない…千早お前は下がってくれ」



「承知しました…」



今夜の俺は千早まで、遠ざけた。


弟は既に、吸血鬼の吸血衝動は抑えられず…人目を避けた場所に幽閉されている。



一度、他人の血の味を憶えれば、多分、あとは奈落に落ちてゆく。
深い深い妖の欲望に支配された闇に。


< 34 / 212 >

この作品をシェア

pagetop