《完》BLOODMOON~あやかしの花嫁~
六巻*血の誘惑
俺の鼻腔を擽る甘い華の蜜のような芳しい血の匂い。



こんな血の香りを漂わせる人間は初めてだった。


花奏は手の甲に擦り傷を負っていた。

滲んだ僅かな彼女の血に俺の吸血鬼の本能が敏感に反応した。



強烈な喉の渇き、吐息がだんだん熱くなっていく。

しかし、躰の芯は冷たくなって、力が抜け、膝元から崩れ落ちた。


躰が自分の意志とは裏腹に、彼女の血を求めて、悶え苦しむ。



苦しむ俺のそばに近づく花奏。


俺は彼女の厚意を邪険に払うしかできない。







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