ひとまわり、それ以上の恋
「イジワルするつもりで言ったんじゃないのよ。あなたが心配するようなことはなかったわ。確かに、朝、起こしに行ったことはあったけれど。秘書として一度きりよ」

 その言葉にようやくホッとして、私は室長の森重さんに声をかけられ、ファイルの山を抱えて業務に戻った。

 まずは自分の仕事をこなさなくては。美羽さんに習って会議の準備を手伝ったり、副社長室のお掃除をしたり、

 受付から言伝をもらったらお客様を案内しなくちゃいけないし、色々やることがいっぱいある。

『朝はこうして時間がないから、今夜説明するよ。君の仕事の方が先に終わったら、秘書室でそのまま待っていてほしい』

 市ヶ谷さんの声を思い出して身体が熱くなる。私はパソコンの前に座り、黙々とキーを叩き続けた。






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