ひとまわり、それ以上の恋
◆9、Love at first sight


 下着を選ぶときは『一目惚れ』から。そして中身を知ってもっと好きになるの。

 一目惚れが安直だなんて言わないでね。はじまりはそうでも、そこからずっと好きでいるんだから。

 今、私が身につけている誘うブラシリーズの一枚だって、そう。

 そして今季、誘うブラシリーズから生まれたのは……。
『Love at first sight』―― 〝彼を一瞬で虜に。一目惚れブラ〟


 翌朝のこと。さっそく虜にさせられたのは私の方だった。声にならない声でかわいい!と心の中で叫んで手に取る。昨晩のことで鬱屈していた気分は砂の城のように瞬く間に消えていった。

 市ヶ谷さんは私の反応を見て、自信ありげな様子で微笑んでいた。

「……ステキ」
「君からその声が聴けてうれしいよ。少しは機嫌直った?」

 私はうんうんと頷くだけ。ただ落ち込んでいただけで怒ってなんかいないんだけど、この宝の山を前にしてそれどころじゃない。

「そこから目が離れていかないね。僕はリビングで待っているから、専任のスタッフが到着したら、一緒に準備をして。いい?」

 夢中になって手を伸ばしていた私に、市ヶ谷さんは笑いながら声をかけて出ていった。それからしばらくして専任のスタッフ、嵯峨野《さがの》さんという女性がやってきて、ゲストルームに顔を見せた。

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