―――弟が犯したその事件。



第一報は、一本の電話だった。




いつもよりも帰りが遅くなったその日。



先に夕食を済ませていた母が食事を用意してくれている間、

着替えようと自分の部屋に戻るところを、

電話の音で足止めされた。



もしもし、と、

名乗らずに電話に出た。



そして相手の名前を聞いて、

無意識に眉をひそめた。



A県警捜査一課の者ですが。



馴染みのない県じゃない。



まだ私が子供の頃に離れて暮らす様になった父親と、

弟の蒼甫が住んでる町。



私は住んでた記憶も曖昧だったけど、

もう何年も会っていない二人が

そこにいることは知っていた。



だから嫌な予感がした。



あの二人がまともな生活をしてる訳がない。



父親はギャンブルで借金を作って

家庭崩壊させた張本人。



そんな父親に引き取られたせいか、

蒼甫はしょっちゅう素行の悪い連中と

諍いを起こしていた。



離れて暮らしてる母にも

そういう連絡は入っていた。



蒼甫がいつか取り返しのつかない事をするんじゃないか、と

本気で心配していた矢先の、警察からの電話。



悪夢の様な知らせだけど、

嫌な予感、だけで済んだのは、

そういう理由があったからだった。

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