昼下がりの微妙な平穏を切り裂くのはいつも同じ。
このけたたましい携帯の着信音と、無線から聞こえる『緊急指令』


―――同じ、だと言うのに。


さすがに睡魔に襲われ掛けていた身としては、十分びっくりしてしまった。


「緊急指令、緊急指令。
東京都A区の路上で事件発生。
走行中の全車輌は至急現場に急行せよ」


ノイズ混じりのそれを聞きながら心臓を落ち着かせると、隣りからクスクスと笑う声が聞こえる。


バツが悪い気持ちになりながらも、私はなんとか平静を装って携帯に応答した。


「A区ですか」


応答した途端に名乗りもせずにそう言った。


電話の向こうの相手も余計な言葉を挟む事はしない。


「S町五丁目。
詳細は不明だが、若い女性が刺された。
目撃者はなし。
犯人と見られる人物は現在逃走中」

「了解。急行します」


それだけの情報を聞き出して、通話を切る。


顔を上げると、既に私が乗っている覆面パトカーは進行方向を変えていた。

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