どれだけ間抜けな顔をしてたんだろう。



蒼甫の言葉をそのまま飲み込んで、

意味を噛み砕けなくなった私を、

蒼甫は微かに笑みを浮かべて眺めていた。



「姉ちゃん、一応東京警視庁の刑事だろ。

何キョトンとしてるんだよ。

十年前に殺人事件の容疑者になって、

その上今東京で起きてる二つの事件の関連も

取り沙汰されてる男目の前にして、

その言葉に言い包められてどうするの」



からかう様な言い方。



蒼甫の言い分はごもっともだけど、

そんな翻弄する様な言い方をする蒼甫が悪い。



だって私は事件を知らない。



十年前に綾乃が襲われた事件も

その後鹿島が殺された事件も。



今東京で追っている二つの事件だって、

私は担当から外されたんだから。



どこまでも蚊帳の外の私が、

そのド真ん中にいる蒼甫の言葉を、

慎重に考えて聞いてしまうのは仕方がない事だと思う。



だけど。



蒼甫の言い方。



私が表面でしか知らない事件。



蒼甫不在のままで、刑事達が頭で組み立てた『真相』



弟だけどほとんど他人として生きて来た

容疑者である蒼甫の『供述』



どっちを信じる? と試されている様な気がして、

気持ちをどっちに振りきればいいのか迷う。

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