クスクス笑っていた声はもう聞こえない。


ハンドルを握ったまま無線のボタンを操作して、


「七号車、了解。現場に急行します」


そう告げた声からは、さっきまでののんびりムードは消えていた。


「どこですか?」


運転席から声が降って来る。
少しだけ目線を上げる。


進行方向を向いたままでパートナーの三浦修二(みうらしゅうじ)巡査が、チラッと私に視線を向けて来る。


「S町」

「了解。十分で行きます。
それまでに眠気飛ばして下さい」

「……」


さっきまでお昼の後のパトロールは拷問だ、なんて喚いていたくせに、俄然目がキラキラしてる。


それでも半分本気で寝こけてた手前、こんな時は先輩面も出来ずに痛い。


応える事も出来ずに黙り込んだ私にチラッと視線を流して来る。
やっぱり三浦君は口元を手で隠して、バレない様に笑い声を堪える。


だけど。バレてるってば。


結局私も気が緩んでたのは否めないから、強く言えずにそっぽを向いた。

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