駅前のファーストフード店で

少し遅めのお昼を過ごしながら、

蒼甫は綾乃の家に行くと言った。



これまでの行き先が

事件に関わった人間の家ばかりだったから、

きっと言い出すとは思っていたけど、

はっきり宣言されたら一瞬うなずくのを躊躇してしまった。



「……綾乃の家も、もうそこには残ってないわ。

両親は離婚して家にはもう別人が住んでる」



紙コップのコーヒーに目を落としながらそう言うと、

蒼甫はほんの少しだけ眉を動かしただけだった。



「そう。

……綾乃が東京にいるって知った時、

薄々そうだろうなって思ってたけど、やっぱり。

せっかく姉ちゃんがいるんだから、

もう一度ちゃんと顔を合わせて、

出来れば謝りたいって思ってたんだけど」



刑事の私がいるから行きたかった場所と言うのは、

綾乃の家の事だったんだろうか。



向かい合って座っている蒼甫が、

頬杖をついて視線を窓に向けるのを

私は黙って見ていた。



「……綾乃には謝らないの?」



ほとんど無意識にそんな言葉を発していた。



思った以上に低い声が出た事に驚いた。



蒼甫はわずかに視線を動かしただけで、

何か思考を巡らしているのか黙っている。

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