『ごめん。

本当はそんな男、居なかったんだ』



彼はそう答えた。



自首しておきながら肝心なところを黙秘してた二人の男。



その怯えた態度から、

二人が報復を恐れて警察に駆け込んだと推測されていた。



二人に対して報復行為を起こす人間として疑われたのは蒼甫で、

一時は彼の死が狂言だと疑われた事もあった、と。



だけど蒼甫の死は事実だった。



すぐにそう結論付けられたけど、

まだ未熟だったせいで気合が空回りした。



怖がらせて東京に連れて来てしまったけど、

その後も綾乃を守りたいって思ったから。



まだ刑事としての経験は少なくて、

柄にもなく突っ走ってたと、

照れた彼を、私はただ呆然と見つめていた。



内心の動揺に気付かれない様に、

普通に言葉を返すのが精一杯だった。




事件から十年の月日が流れた。



彼と東京に出て来て、

もう五年以上一緒に過ごして来た。



それでも彼は、

私に嘘をついた。

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