東京湾心中事件発生から一週間。



検死やもろもろの手続きのせいで遺族への遺体の返還が遅れ、

今日になってやっとお通夜が営まれた。



捜査が進まないせいで佐々木の方も、女性の方も、

周りを憚った様なこぢんまりとした葬儀になった。



遺族や関係者に対しては

申し訳ない気分を拭えない。



報道では佐々木に前科があった事も報じられていた。



かと言って、

佐々木が飲んだ睡眠薬は、

女性が職場の病院から入手した物だと言う事もわかっている。



あの夜の数時間、車内で何が起きたのか

何とでも妄想出来る状態で、

どちらが『被害者』で『加害者』なのかも判別出来ない状態。



女性の遺族からすれば、

前科のある佐々木が一方的に悪いと

言いたいところだっただろうけど、

それも大きな声で主張する訳にはいかない。



『変死』と名付けられてしまった事件のせいで

群がる報道陣をシャットアウトして、

女性のお通夜は営まれた。



お通夜の席もピリピリしたムードが息苦しかったと、

お焼香に行った主任が表情を固くしていた。




翌日の佐々木のお通夜には、

主任の代わりに私が

担当刑事の酒井さんと一緒に参列した。



女性のお通夜よりも多分ずっと質素。



元々首都圏が地元じゃないせいもあってか、

焼香客は寂しい位にまばらだった。



「……これも俺達の捜査が進展しないせいなんだろうな」



お焼香を済ませた後、

遺族を見守る事の出来る位置まで離れて立ったまま、

酒井さんがボソッと言った。

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