「確かに散々悪い事して来た男かもしれないけど。

人一人の最期がこんな寂しい形で営まれて、

俺達は何もする事が出来ないなんて。

刑事として失格だよな」



いつもは多少ふざけた空気を醸し出している酒井さんも、

こんな寂しい最期を目にしたら

そんな気分にもなったのかもしれない。



それでも私は同意するにもし切れず、

黙って遠い遺影に目を向けた。



いつの写真だろう。



ちょっと精悍にも見える明るい笑顔は、

とても前科のある人間とは思えなかった。



傷害事件や恐喝、婦女暴行なんて凶悪な事件を起こして

有罪判決を受けた人物とは思えない。



これが更生した後の写真ならば、

人は本当に変わるのかもしれない、とすら思えた。



「……事件が解決していたとしても、

この状況はそうは変わらないんじゃないでしょうか」



思った通りの言葉を紡ぐと、

酒井さんは眉をしかめて私を見つめた。



「擦れた事言うな、お前」


「……すみません。

でも違いますか?

たとえ更生したとしても、佐々木は罪人です。

……かつての友人や親族だって、

彼との接触を持とうとしないんじゃないでしょうか」


「……正解だろうな。だからこそこの状態だ」



酒井さんがやり切れない様に呟いて、

目を向けた遺族席に着く親族は数人。



しかもずっと顔を伏せたまま

遺影を見上げようともしない。



焼香に訪れる人も、

時間が経ってしまうと、もうほとんどいなかった。

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