長椅子に座って頭を抱えた私の前に、

黒い革靴の爪先が見えた。



ハッとして顔を上げると、

同じ様に戸惑った表情を浮かべたままで、

三浦君がペットボトルのお茶を差し出してくれていた。



「少し、落ち着きましょう」


「……ありがとう」



受け取りながら、

三浦君の手も微かに震えてるのがわかった。



当たり前だけどこんな事初めてで、

この先どうしていいのかわからないのは、

私も三浦君も一緒だった。




事故ですよ。どうしようもなかった。




私を落ち着かせようとしてくれているのか、

三浦君は隣りに座って

何度もそんな事を繰り返してくれた。



だけどその言葉の大半は右から左に抜けて行って。



やがてどのぐらいの時間が過ぎた頃なのか。



手術中の赤いランプが消えて、

私も三浦君も立ち上がった。



中から出て来た青い手術着のドクターに、

言葉も無いまま駆け寄る。



ドクターは、

ただ黙って、首を横に振った。

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