強引な次期社長の熱烈プロポーズ

3.夜のドライブ

一体どういうつもりだろう。
冗談にしては、度を超している。しかも冗談なんて言うタイプでも、あんなことをするタイプにも思えない。
かといって、本気かと聞かれても自信もないし、ありえないとすら思う。

だけど確実に百合香の中で、柳瀬の存在が膨れて、支配される。





閉店の時間が近づき、百合香は内線を繋ぐ。
掛ける先はもちろん柳瀬だ。本当は心臓が飛び出しそうで逃げてしまいたいくらい、声を聞くのが怖いが仕事は仕事。
そう割り切ってコールを鳴らす。


「はい」
「あ、神野です。柳瀬さんですか?」
「あぁ。どう?」
「それが、あと少しなんですけど…」


あの山積みの在庫のカウントもあと少し…とはいえ文具関係は細かなものが多い。閉店後も数時間掛かるだろう。

「とりあえず戻っておいで」
「は…はい」

百合香は指示されたとおりに2階に戻ると程なく店は閉められ夕礼が始まった。


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