アジアン・プリンス
(10)車中にて…
本島のゲートを潜り抜けると近代的なビル郡が乱立していた。

ティナはその様子に一瞬たじろいでしまう。

ビルの外壁には電光掲示板が輝いていた。中でも、縦にスクロールする掲示板にティナは目を奪われた。どうやら日本語のようだ。


「驚いたかい? ああ、あれは日本人向けだ。君は向こうだね」


そう言ってレイが指した先は、お馴染みの横スクロールの電光掲示板に、『ようこそアズウォルドへ! 今日の天気は晴れ……』と英語が流れていた。



アメリカ人にとってアズウォルド王国は東洋の島国のひとつに過ぎない。レイの言うように、太平洋戦争の歴史を学ぶときに名前が出て来るくらいだ。普段は、アメリカ人女性が王太后であることすら忘れ去られている。

政治・経済・軍隊・王制などは別として。ティナの妹アンジーなどのほうが詳しいかもしれない。

1番遊べる島は? 美しいビーチは? 美味しい食べ物は? など、図書館で探すより彼女らに聞くほうが早い。

だが、バカンスには興味のないティナが職場である図書館で調べたところ……。


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