沈丁花
遭遇




…天然理心流…。

俺たちの種はそこにあったな…近藤さん…。




「俺は武士になるんだ!そんで!この竹で矢を作ってやる!」

少年のくせに乱暴。それで農家の子が武士だと?なんとバカバカしい。
竹の苗を埋めてるよ。このバラガキが。土方生家の者は皆碌でなしなのか?


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「真紅の面紐に朱塗りの皮胴だぁ?この洒落者めが!」

この一言で、道場内に竹刀のこすれ合う音がけたたましく響く。その響きの後に、耳を劈く呻き声が道場を埋め尽くす。

「洒落て何が悪りぃんだ。」

道場に唾を吐き捨て、土方は去っていく。

此の所、武士になるという望みを抱き、色々な剣術道場を点々としてきたが、どうも手応えがない。
武士とはそんな愚か者なのか。暴言だけ吐き捨て、命狙われるときには神に縋る、ただの外道が多いのか。

そんなことを考えながら、土方は剣術道場を抜け、いつもの練習場所へ足を運ぶ。
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