『若恋』一度だけのキス【完】
一度だけのキス




―――若の大事なひとが目の前に眠っている。



白いふかふかのソファーに猫のように丸まってスヤスヤ眠っている。



「りおさん、風邪ひきますよ」


9月半ばにもなると昼寝でも寒い。


「りおさん、風邪を…」



揺り起こそうとして。

―――やめた




頭にちらつくのは自分だけに向けられた眼差しと言葉。



『ねえ、榊さん、見て!』

『榊さんがいて守ってくれたから』

『ありがとう、いつも』

『妹さんはそんなこと望んでない!』

『誰もが許さなくてもわたしが許すから』



若を庇い銃で撃たれたりおさんを屋敷に連れてきて、すでに数ヶ月が過ぎていた。



若が誰よりも大切にしてるひと。

命をかけて守っている、大切なひとだ。





< 1 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop