イジワル社長と秘密の結婚
初めての夜
「さっぱりした」

お風呂に入り、今日一日分の疲れを取る。といっても、タクシーで言われた“離婚できない”の言葉が、ぐるぐる頭を回って、リフレッシュしたとまでは言えないけど。

あれは、どういう意味なんだろう。聞いても、答えてくれないから、真相が分からないし……。

ミネラルウオーターを飲み、寝室へ向かう。結局、ベッドは用意できないままで、今夜も蒼真さんと一緒に寝なければいけない。

「出来るだけ離れなくちゃ」

課長の誘いに乗るなと言うなら、蒼真さんの誘いにも乗れない。ベッドの壁際まで移動したとき、

「なにやってんの?」

まだ少し濡れた髪のままで、蒼真さんが部屋へ入ってきた。

「離れて寝なきゃなって思って……」

当然のように答えると、蒼真さんもベッドへ上がってきて、私に近付いてきた。

「ちょっと、どうしたんですか?」

思わず体をのけぞると、彼は不満そうな顔をした。

「驚くことないだろ?」

「驚きますよ。あまり、近づかないでください」




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