ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
刃は光る





―――言葉に詰まることなくしゃべりきった愁の腕の中で、私は泣きそうになるのをこらえていた。


(…愁)


愁の広い背中に腕を回すと、一瞬身体を強ばらせたもののさらに私を抱きしめる腕に力を込める。



「………あとはぬしの知る通りよ。人間界を放浪し続け、あの日ぬしに拾われた」


その言葉に私はただ頷いた。
愁は私の頭をゆっくり撫でながら、さらに重い息を吐き出す。



「我の従者である燈はもちろん、梗も我を探し続けていた。…ぬしの感じていた視線、あれもすべて梗の仕業。ぬしに毒を盛った輩も梗の差し金だというわけだ………」





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