女王様のため息


「ねえ、何だか嬉しそうに見えるんだけど?」

「気のせいだ……とも言えないか。真珠が幸せになるなら、いったん木端微塵になるのもいいって思ってるだけだ」

「とどめを刺されるとは言ったけど木端微塵になりたいとは言ってないよ」

私の拗ねたような声にも小さく肩をすくめただけで。

「木端微塵になったら、俺がひとつ残らず拾い集めて復元してやる。
今よりもっといい女になるように、俺が作り直してやるから、どんと行って来い」

「海……」

「言ってるだろ。俺は真珠を大切に思ってるって」

背が高い海を見上げる瞳が少しずつ滲んでくる。高校生の時から海の近くにいた私は、いつの間にか会社では『女王様』と呼ばれるほどに自分を装う女になってしまったけど。

本当は、泣いてばかりの情けない女なんだ。

「高校の頃とおんなじ顔だな」

海の言葉に、私のほほに熱いものが流れた。

「ばかー」

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