「杏奈、ごめん!」
「どういうこと?」

 友人である田中沙理菜は、申し訳なさそうに頭を下げた。
 私達がいるのは、飲み屋の前。久しぶりに二人で飲もうと言われたから来たのに、顔を合わせた沙理菜がとんでもないことを言い出したのだ。

「二人だけっていうの、嘘なの。合コンって言ったら、杏奈絶対こないと思って」
「……帰っていい?」
「駄目!」

 沙理菜ががっしりと私の腕をつかむ。そして縋るような目つきで私を見てくる。

「彼氏と別れたばっかりのあたしの顔を立てると思って!」

 目に涙まで浮かべちゃって……。

「そんなの沙理菜の勝手でしょう? 私は合コンなんて興味ない」
「そりゃあ杏奈くらい美人だと男の方から寄ってくるけどさ」

 そういう沙理菜も、可愛らしい女の子だ。私はため息をつく。
 さっきの嘘泣きもどこへやら、沙理菜はにこにこと笑って、両手を合わせた。

「写メ見た同僚がさ、杏奈を連れて来いって言い出してさ」

 私は呆れたように沙理菜を見る。

「全然悪いって思ってないでしょ」
「お願い」

 沙理菜はにっこり笑っている。
 この笑顔が、憎たらしい。

「……今回だけだからね」
「うわぁーいっ! 杏奈姉さん格好良い!」

 痛くなってきた頭を押さえながら、私達は店の中に入った。

「ごめーん、おまたせ!」
「お、沙理菜ちゃん、こっちこっち」

 そこには四人の男性と、二人の女性。遅れてきた沙理菜と私は空いていた席につく。

「どうも、こんばんは! 田中沙理菜です」

 沙理菜が愛想を振りまいて挨拶するけど、私の方はそんな気にはなれない。

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