マスカケ線に願いを

 堕ちた心



『お昼、一緒に食べよう』

 そんなコウからのメールが来たのは、ユズがお昼を一緒に食べれないと断っていた日だった。
 だけど、私は既に小夜さんと一緒に食べる約束をしていた。

『小夜さんも一緒なんですけど……』
『問題無し』

 コウに問題がなくても、小夜さんはどうだろう。

「小夜さん?」

 既に仕事に取り掛かっていた小夜さんに、私は小声で声をかけた。小夜さんが目線だけで答える。

「久島弁護士が、お昼を一緒にと言ってるんですけど……」
「えっ」

 私の言葉に、小夜さんは真っ赤になった。

 あれ、この反応は……?

「う、うん、私は構わないわよ」

 私はじっと小夜さんを見つめる。

「……もしかして、小夜さんって、久島弁護士のこと?」
「っ!」

 私の問いに、小夜さんは顔をさらに真っ赤にさせる。そして頬を押さえた。
 その様子があまりにも可愛くて、私は微笑んだ。

「それじゃあ、久島弁護士にもお昼一緒にって言っておきますね」

 これ以上仕事の邪魔をするのも悪いので、私は笑ってその場を後にした。

 あの様子だと、小夜さんはコウに憧れ以上の何かを抱いているに違いない。
 コウが小夜さんにどんな印象を抱いているかはわからないけど、明るくて優しい小夜さんの恋が、上手く行くといいと思った。

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