マスカケ線に願いを

 ライオンとサーファー


「これ、頼まれていた書類です」
「お、もうできたのか?」

 私が書類を提出すると、佐々木主任が人懐こいまん丸の目を、さらに丸くさせた。
 それは、そろそろ帰宅時刻という時間帯だった。

「さすが大河原君は仕事が速いな。本当にしっかりしてる」
「おだててもなにもでませんよ」

 にこりと破顔してそう言った佐々木主任に褒められて、私もくすぐったくて微笑み返した。


 司法書士とは、依頼に基づいて、裁判所に提出する書類を作成したり、供託などの手続きの代理人になったりする職業だ。
 うちの法律事務所には、私のような司法書士と、司法書士とはまた畑の違う弁護士が揃っている。特にうちの弁護士は優秀な人が多いらしい。
 三階建ての事務所の、二階が司法書士の仕事場で、三階が弁護士の仕事場だ。


 佐々木主任は目を細めながらしみじみとうなずいた。

「若い人もそうでない人も、最近は自己責任が軽薄で本当に困る。その点、大河原君には大船に乗った心地で任せられるよ。本当にしっかりしてる」
「主任ってば、褒めすぎですよ」

 そこまで手放しで言われると、照れてしまう。
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