マスカケ線に願いを

「そうだな」

 ユズは、にやっと挑発するように笑った。

「まずは、杏奈と友達になるところからだな。今は完全に俺は杏奈のストーカーなんでな」

 ユズの言葉に、私は目を丸くした。

「自覚していたなら、良かったです」

 ぽつんと洩れた私の言葉に、ユズは噴き出した。

「そこは否定しろよ」
「否定できませんので」

 私は笑ってしまう。


 ユズは不思議な人だ。


「それじゃあ、ゆっくり休め」
「送ってくれてありがとうございました」
「おう」

 私はユズに頭を下げて車から降りた。


 私の頑なな心の鎧に、するりともぐりこんでくる。

 だけど私は、それをそっと避ける。
 他人に、気を許しちゃいけないから。

 ユズに気を許したら、自分が崩れてしまいそうで怖かった。








< 46 / 261 >

この作品をシェア

pagetop