マスカケ線に願いを

「そんなことして辛いのはユズなんじゃないの?」
「お前は……」

 ユズは苦笑して、私の耳元でそっと囁く。

「そんなこと言ってると、本当に襲うぞ」
「その瞬間ユズのこと嫌いになる」

 ぴしゃりと私は言い放つ。

「う」
「それにお弁当もなし」
「おま」
「ついでに今日の夕飯もなし」
「夕飯!」

 私は笑いながら立ち上がる。

「今から用意するから。ユズはお風呂入る?」

 そう言ってからふと気づいた。

「私、ユズが着れる服持ってない」
「いや、出張帰りそのまんまここ着たから、車に荷物置いてある」

 用意のいいことだ。

「それじゃあ、用意している間にお風呂入っててね」
「わかった」


 もしも、ユズがあの時こなかったら、私はいったいどうなっていたんだろう。
 そう考えると、眠るのも怖い。

 だけど、私と一緒にユズがいる。

 それが、私の心を救ってくれた。

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