マスカケ線に願いを

「っ」

 突然、腕を引かれて私は体制を崩した。
 はっとしたときには、私はユズに抱きしめられていた。

 どきっ

 馬鹿みたいに心臓が鳴る。

「……こんなとこで、寝かせる気?」

 眠気が混ざったユズの声は、ぞくりとするほど色っぽくて、私の鼓動を加速させる。

「抱っこして寝てやるって言ったのに」
「ゆ、ユズが、先に寝てたんでしょ」

 ユズが喋るたびに、吐息がうなじにかかって、くすぐったい。
 それに、ぐずるユズが半端なく色っぽい。

「起こしてくれればいいのに、この毛布は、なんだよ」
「疲れてるだろうから、起こしちゃ悪いと思ってっ」

 ユズが体制を変えて、私をひざに乗せた。

「ちょっ、おろしてっ」
「杏奈、良い匂い」

 くすくす笑いながら、ユズが私を抱きしめた。

 ユズ……もしかして、寝ぼけてる……?

 真っ赤になって唇をかんだ私は、ばしっとユズをはたいた。

「いっ」
「放してってば!」
「あ」

 頭を押さえたユズは、素直に真っ赤になった私を放した。

「すまん」

 ユズは照れたように頭をかいた。
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