雪が降る町~追憶のletter~


「じゃあ、またね」
「ああ。つか、お前戻れるか?」
「た、多分···」


それから少し話をして、晶は自宅に戻ろうとしていた。
隣の部屋のバルコニーに再度出ると、しんとした空に冷たい風が吹いていて快斗の部屋で暖まった筈の体は一瞬で冷え切ってしまう。


「手」


そういって快斗が晶に手を差し出す。
その手を晶はゆっくりと取ると、柵に慎重に登った。そして先程とは違って一跨ぎでの余裕の着地を見せた。


「意外と…大丈夫だった…」
「だな。それよりお前本当に俺に用事あったんじゃなかったのか?」

(あ…窓から見てたこと忘れてた)


晶は寒さから自分で自分の体を抱きしめるようにして白い息を吐きながら、『偶然だった』と快斗に伝えた。

快斗も半ば諦めたようにそれを受け入れて晶が窓を開ける姿を見ていた。



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