雪が降る町~追憶のletter~


「あー今日も疲れた!目が痛い、腰も痛い!」

オフィスで伸びをして、腰を伸ばしているのは結城晶《ゆうきあきら》。
入社5年目25歳、独身、彼氏ナシ。

「ずっと座りっぱなしって言うのもラクじゃないわよね~」

それに答えたのが都築ありさ《つづきありさ》。
同じく25歳の同期で同僚。

着替えを終えて更衣室から2人で出るなりスーツの男が壁に寄りかかり腕を組んで声を掛けた。

「歩きっぱなしだってラクじゃないぜ?」

そう言った男は営業の真田亮《さなだりょう》。
歳は28で晶、ありさの先輩に当たる。なかなか容姿も良くて、人当たりもいいために女子社員から人気だ。

「え?聞いてたんですかぁ!」
「あんな大きな声だったら聞きたくなくても聞こえてくるよ」

ありさと真田の掛け合いを笑いながら横で聞いていると、真田は晶に話しかける。

「結城さん、あったかそうなマフラーだね」

晶の首には白いふわふわとしたマフラー。

「もうこの時期から手離せません」

そういって晶はマフラーで口元を隠した。

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