ヴァムピーラ


 数日後、現像された写真を見せられたとき、私は愕然とした。
 走り回る子供の手で撮られた写真だ。ぶれて何が映っているかわからないものが大半だった。
 ショックのあまり泣き出してしまった私を、両親は宥めてくれた。

 その日から、私はカメラに、写真を撮ることに興味を持った。
 綺麗な写真を撮りたいと、一瞬を切り取りたいと、そう願って。


 それが、今の私が在る理由。

 そして、カメラマンの卵としてこのモデルの撮影現場にいる理由。




 それは数日前のこと。

「モデルの撮影?」
「そう、私の知り合いのカメラマンが、カノンを現場に連れてってくれるって言ってた」

 父のその言葉に、私はむすっとして、

「私、人間を撮りたいと思ったことは一度もないよ」

 そんなふうに言った私を、父はからかうように、

「そんなことを言ってるんじゃあ、いつまでたってもカノンの撮りたいものは撮れるようにはならないんじゃないかな?」
「もう、意味わからない」

 父の悪い癖だ。言葉が酷く抽象的で、伝わりづらい。
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