シーソーが揺れてる
大4章

「あら、今日は一人なのねえ」
次の日。公園のベンチに座り本を読んでいた春香は、自分のすぐ左側に腰を下ろす直人を見て声をかけた。
「悪い?」
「いや、べつに」
そう言って春香は本を閉じるとそれをバッグに放り込んだ。
「今日は片山君来てないんだなあって思って」
「あいつは今日学校なんだよ」
「学生なんだー」
「うん。it系の大学行ってるらしい」
「へえすごいねえ」
春香はいまいち感情の無いような声で言った。
「なに?おれよりも良太のほうがいいって?」
「まあそうねえ。片山君のほうがあんたなんかよりしっかりしてそうだし」
「悪かったなしっかりしてなくて」
「は?なに嫉妬してんだよ」
「え?」
「それがあんたなんだからしょうがないでしょー?」
「はあ、・・・」
いったい春香は何を言っているのか直人は分からずにいた。そして春香もいったい自分は今何を言っているのか分かっていなかった。いや、分からないふりをしているのかもしれない。
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