カローレアの金
しばらくして、馬車が国境を越えたころ、一人がジャンに聞いた。

「そういえばお頭、アンと戦ってる時…一瞬動きが遅れたのはなんでだ?」
「ああ…」

ジャンはその時の事を思い出す。
下から振り上げられた剣…その向こう側に見えた、アンの目。

「確かに殺す気でくるとは言っていたが…」

思い出すだけで身ぶるいがした。

「あいつ、殺気なんて身につけてやがったんだよ」
「え…」
「殺気なんて何度も向けられたことがあったが…アンのは格別だった」
「それって…」
「あいつ、化けるぞ」

ジャンは楽しそうに笑った。
その表情は、娘の成長を楽しみにする父親そのものだった。
< 80 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop