甘い誓いのくちづけを
都心の駅から程近い場所にある、インターナショナルチェーンのホテル。


サービスが徹底されていて、こうしてロビーラウンジで過ごすだけでも高級ホテルの雰囲気を存分に味わえる。


運ばれて来たばかりのコーヒーカップは、繊細な薔薇のデザインが施されたアンティーク仕様。


そこから漂う湯気すらも、どこか高貴さを漂わせていた。


鼻をくすぐるのは、このラウンジにピッタリなブルーマウンテンの上品な香り。


それを一口飲んだ後、ソーサーの隣に置いてある小さな箱をそっと開けた。


静かに、だけどその存在感を主張するかのように輝く、ダイヤのリング。


2年近く付き合っている彼から数ヶ月前にエンゲージリングとして受け取ったこれが、最近は何故か鈍色(ニビイロ)に見えて仕方が無かった。


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