やっぱり、好きだ。
 
 「高村先生、唇から血が出てる。お皿は私が片しますから帰って手当して下さい」

 言葉に詰まった私に、桜井先生が助け舟を出してくれた。

 「安田もいい加減にしなさいよ」

 朝倉先生が軽く安田に蹴りを入れ、私が運ぼうとしていたお皿をキッチンに持って行ってくれた。

 私の本性を知っても、罵るどころか優しさをくれるみんなの気持ちが、ただただ申し訳なくて苦しい。

 「すみません。ありがとうございます。この埋め合わせは必ずさせて下さい。今日はお先に失礼します。ごめんなさい」

  そんなみんなに頭を下げて、フローリングの端に置いていた鞄を急いで拾い上げては、逃げる様に玄関を出た。

 早く帰って泣きたかった。我慢が限界だった。
< 134 / 353 >

この作品をシェア

pagetop