やっぱり、好きだ。


  ―――ぐーーーー。

 「・・・」

 「サヤ子」

  「・・・ハイ??」

  「今の腹の音、俺のせいにする気じゃないよな?? 鳴らしてません風を装ってる様だけど」

 「・・・」

 やっぱり誤魔化せなかった。お腹を擦りながら、恥ずかしさのあまり、顔を熱くしていると、

  「腹減ったら誰だって鳴るんだから、そんな顔真っ赤にしなくても。・・・どんまい」

 青山くんが笑いながら私の背中を軽く叩いた。

 もう嫌だ。何で今鳴るかなー。

 「・・・私、戻ります」

 恥ずかしすぎるので、脱走を試みると、

 「サヤ子」

 青山くんが、ドアに手をかけた私を呼び止めた。

 「ペナルティ、決めた。他の先生がいない時は敬語禁止」

 「でも、青山先生はこの仕事では先輩ですし」

 さすがにそれは出来ない。社会人として、失礼だと思うから。

 逃走をやめ、ドアから手を離し、振り返って青山くんの方に身体を向けた。

 「でもじゃねぇ。これ、決定事項だから、違反したらまたペナルティつくからな。つーか、早く戻れって。腹、限界なんだろ」

 青山くんが意地悪そうに笑った。

 確かに限界。もう1回くらい鳴りそう。

 「・・・じゃあ、行くね。青山くん」

  約束通りタメ口をきくと、青山くんが嬉しそうに笑った。
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